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佐藤白君
sugarwhite.exblog.jp
アルバムのチカラ
先日、アーツ千代田3331で行われたトークショー「アルバムのチカラ」に出かけました。

登場するのは、仕事っぷりがすてきな編集者・藤本智士さん、写真集『浅田家』で心をわしづかみにされた写真家の浅田政志さん、ミュージシャンの早瀬直久さん(べべチオ)さんです。


なかでも藤本さんは、そのむかし、本屋で「あたらしいふつうを提案する」というショルダーフレーズを掲げた雑誌『Re:S(りす)』を見かけたときから、ずっとずっと気になっていた人。

平たくいうと、その時、私がなんとなく形にできたらいいなと思っていたようなことを、自らの土俵で既に形にしていた人が藤本さんで、私のひそかな憧れの人だったわけです。


そんな藤本さんが、以前「フイルムで写真を残す」と言うことについて『Re:S』のウェブサイトで、少し荒削りな文章で熱く語っていたことがありました。
だからこのイベントを見つけた時、あの文章のテンションを思い出し、これは話を聞いてみたいなあと思ったのです。


参加してみて思ったのは、プライベートでシャッターを切るのは何のためかといえば、当たり前のようだけど、未来でも楽しむためということ。決して、たんすの肥やしのようなデータを増やすためではなくてね。でも現実は、デジカメの普及で、結果的にデータコレクションになってしまっている人がほとんどじゃないかなあ。


それから、「整理整頓」とひと口にいうけれど、「整理と整頓は違う」という話も心に残りました。「整頓」は「あるものを分類すること」で、「整理」は「必要なものをすぐ取り出せる状態にすること」だそうです。
(この話は、梅棹(うめさお) 忠夫さんの著書『知的生産の技術』(岩波新書)に詳しいです)

となると、アルバムをつくるという行為は「整理」で、これからページをめくる人のために楽しみをつくるという、愛ある編集作業でもあります。確かに、母子手帳の写真付きのものなんて、ものすごく愛を感じるもんね。
東日本大震災でも、USBメモリは拾われなくても、汚れたアルバムは拾って届けられたそうですが、そのエピソードからも、人は直感的に、何に重みがあると判断するかがよくわかります。


それから、ある方に写真を見せていただいたとき、それを撮っている人の姿が思い浮かんで心が動いたという藤本さんの話もよかった。
「綺麗な私を撮って」的な写真館もあるけれど、その成果物に見られる妙な不自然さや気持ち悪さは、「撮っている側のやってあげてる感」と「撮られている側のテンション」のアンバランスさにあるのかもしれないよなあ。

そんなわけで、私もこれから毎年1枚ずつ、写真を残していけたらいいな…と漠然と思っていたのですが、新しいはじまりの1枚を、セルフレリーズで撮影する「りす写真館」で残そう、という気持ちになったのでした。


▼浅田家 (赤々舎/浅田政志)
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家族全員参加のシチュエーションコスプレ写真集。バカバカしいことを超マジメにやるということで、かなり笑わせてくれながらも、次第に感動のようなものがこみあげてきて、最後にはカタルシスが得られてしまうという…。


▼知的生産の技術 (岩波新書/梅棹 忠夫 著)
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国立民族博物館初代館長、梅棹(うめさお)忠夫さんの名著。現在までに80刷以上も増刷されているという大ベストセラーです。


▼リビングのデカダンス(エイベックス・マーケティング/ベベチオ)
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このイベントにきて初めて知ったベベチオの早瀬さん。音数が少なくて聴かせる楽曲が好きな私は、すぐに好きになりました。藤本さんが「ベベチオを聴かないと原稿が書けない」と言っていたけれど、なんとなくわかる。何か考えるのにいい脳波が出そうな感じです。
# by sugar-white | 2011-12-11 22:19 | こころの旅